脊髄損傷となり必要となる福祉車両について

麻痺が残っている

脊髄損傷で移動が困難なので福祉車両を購入したい 三豊市豊中町岡本 N様

7月4-1

【質問】
脊髄損傷による下半身麻痺で車いす生活となり、移動が困難になりました。
福祉車両と言われる障害者用の自動車を購入したいのですが、交通事故の加害者に購入費用を請求できますか?

N様(高松市多肥上町)


弁護士からのアドバイス

高松市多肥上町のN様、ご質問ありがとうございます。

交通事故で脊髄損傷となり重度の後遺障害が残って、自力による移動が困難となった場合、自動車を利用した移動が中心となることがあります。

障害者が乗車しやすい・運転しやすい車両のことを『福祉車両』と言います。
『乗車しやすい』・『運転しやすい』と記載したように、福祉車両には障害者が乗車しやすく、走行中も体勢が安定できる『乗車を目的とした自動車』と、障害者が運転できる『患者本人が運転をする自動車』の2通りあります。

まずは、乗車を目的とした福祉車両にも種類があり、『助手席が90度外向きに回転し、座ったままでの乗降がしやすい』、『自動車後部ドアから、自動車に設置されたリフトを使い車いすのまま乗車し、車両内で車いすを固定できるため、乗車中も車いすに座っていられる』といった、足が不自由な人が乗りやすい福祉車両があります。

これらの装備は元から付帯して販売されているものと、既存の自動車を改造したものがあります。
元より福祉車両として販売されている自動車は、自動車メーカーが既存の車種を福祉車両として再設計しているため、福祉車両として過不足が無く無難と言えます。
一方で、福祉車両に転用している車種はミニバンタイプの軽自動車やワゴン車などに限られているため、選択の幅が狭くなります。


7月4-2

一方で既存の自動車を改造するタイプであれば、自分の好みにあった自動車を福祉車両とできます。
しかし、車の構造上福祉車両に向いていなかったり改造が出来なかったりして、必ずしも自分な好きな自動車を福祉車両に出来るとは限らず、改造が出来ても大がかりとなるため通常よりも改造費用が割高になるといったデメリットがあります。

自分で運転をするタイプの福祉車両は、ほぼ改造をして作成する方法を取ります。
脊髄損傷で下半身麻痺の場合には、フットペダルが使えないため、レバーやボタンといった腕や指による自動車の制御のみで、運転をしなければなりません。
人により障害の度合いが違うため、オーダーメイドでなければ運転が出来ないからです。

そのため、普通の自動車よりも改造費用が掛かる分割高になりますし、障害がある場合には普通自動車免許を取得していても、障害者用の専用の免許を取得し直す必要があるため、自分で運転をする選択をした場合には、費用が高額になります。

福祉車両の購入は高額になる事が、お分かりいただけたと思います。
交通事故により脊髄損傷などの後遺障害を負って福祉車両が必要となった場合には、加害者に購入費用・改造費用を請求することができます。

自動車は消耗品に当たり、買い替えも必要となるため、平均余命までの間の買い替え費用も請求できます。

例えば、脊髄損傷患者が40歳男性でしたら、平均余命は42.35年です。
判例では自動車の耐用年数は6年毎とされるので、40歳・46歳・52歳・58歳・64歳・70歳・76歳・82歳の計8回、自動車を買う必要があります。

自動車の購入費用が300万円・改造費用が100万円で合計400万円が買い替えごとに必要となってきます。
単純計算をすれば400万円×8回=3200万円になりますが、示談の場合には『一括で支払った後複利運用をして、必要となった時に必要金額になるようにする』という決まりがあるため、ライプニッツ係数という係数を参考にして計算をします。
初回400万円・2回目分400万円×0.8374=334.96万円・3回目分400万円×0.7013=280.52万円…と計算していき、8回合計では1865万4800円になります。

しかし、脊髄損傷患者側の主張を、加害者がそのまま受け入れることは少ないです。
『福祉車両まで買う必要があるのか?』、『車両代や改造費が高すぎるのではないか?』、『自動車の買い替えは脊髄損傷とならなくても、将来的に継続して行っていただろうし、改造費に関しては支払うが車両代は支払わない』といった主張がなされます。
こうなると話し合いは平行線をたどる可能性が高いため、弁護士を雇って示談に当たってもらう方が良いでしょう。

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