交通事故による麻痺が原因で収入が減少した場合には

麻痺が残っている

麻痺の後遺症で収入が減少。補填してもらえる?高松市塩江町 S様

7月2-1

【質問】
交通事故の後遺症で足に麻痺が残り、会社から部署の移動を言われました。
そのため交通事故前よりも給料が下がったのですが、減った分の収入の補填を加害者側に請求することはできますか?

S様(高松市塩江町)


弁護士からのアドバイス

高松市塩江町のS様、ご質問ありがとうございます。

『交通事故の後遺症で足に麻痺が出て、仕事を辞めざるを得なくなった』、『後遺症のため軽作業の部署に配置転換され、給料が減った』ということがあります。
交通事故の後遺症で収入が減少した場合には、逸失利益が認められることがあるのですが、減少した収入の全額が補償されるものではありません。

交通事故の逸失利益の計算には、後遺障害等級が深くかかわってきます。
後遺障害等級というのは、『交通事故による後遺症の度合いがどのくらいなのか表したもの』になります。
後遺障害等級には、介護第1級・介護第2級・第1級~第14級の16段階があります。
数字が小さいほど後遺障害が重いとされ、介護とついているものは遷延性意識障害や高度脳機能障害など特に厚い介護を必要とする後遺障害の場合に認定されます。


脊髄損傷2-2

後遺障害等級には、それぞれの等級に『労働能力喪失率』が定められています。
労働能力喪失率とは文字通り、『後遺障害によって労働する能力がどの程度失われたか』を表しています。
介護第1級・介護第2級・第1級~第3級は100%、第4級は92%、第5級は79%、第6級は67%、第7級は56%、第8級は45%、第9級は35%、第10級は25%、第11級は20%、第12級は14%、第13級は9%、第14級は5%と、後遺障害の等級が下がるごとに下がっていきます。

例えば交通事故の後遺症で足に麻痺が残り、第9級と後遺障害等級の認定がされれば、35%の労働能力が下がったとみなされ、年収500万円であったのならば175万円の収入の減少があるとみなされます。

この方法は交通事故の示談において広く使われているのですが、問題点がいくつかあります。
先ほど、『交通事故時の年収が500万円で、後遺障害等級第9級に認定された場合、175万円が逸失利益となる』と述べましたが、実際には仕事を辞めざるをえなくなった人や、交通事故以前の仕事を継続して出来ているので給料が減らなかった人、人事異動で収入が減った人など、様々なケースがあります。
仕事を辞めた人からすれば全額補償してもらいたいですし、給料が減らなかったのならば逸失利益は発生していないことになりますし、収入が減少した人でも逸失利益内なのか超えるのかで考え方が違ってきます。

つまり、画一化しすぎた内容で、個人の状況ごとに対応するには不十分なので、しばしば裁判で逸失利益の内容が争われることがあります。
裁判所も後遺障害等級と労働能力喪失率・逸失利益の判断には慎重な姿勢でおり、『後遺障害等級は第9級相当だが、交通事故時についていた職種から考えると、労働能力喪失率は50%が相当』とするものもあれば、『後遺障害等級は第12級相当だが、交通事故以後も変わらず仕事ができ、収入の減少も生じていないため、逸失利益は認められない』という判例もあります。

S様が麻痺に対する後遺障害認定を受かられているかはわかりかねますが、逸失利益を請求するには後遺障害認定が必要であると言えます。
その上で、労働能力喪失率と、実質的な収入の減少額を照らし合わせて請求することになります。

先ほどの例を引用して、年収500万円で後遺障害第9級・逸失利益は年175万円の計算になるとします。
実際の収入の減少が年間100万円の場合には、年100万円をベースとして逸失利益の計算を行います。
ここで問題となるのが、実際の減収が年間200万円と、後遺障害等級から導き出された逸失利益よりも高いケースです。
保険会社側は『後遺障害等級の労働能力喪失率を超える部分に関しては認めない』と主張するでしょうし、裁判所も認めるか未知数な部分もあります。
この場合、年175万円の減収で計算された逸失利益を受け入れるか、裁判で争うことになります。

裁判で主張が認められるかは、個人の状況による差が大きいため、事前に弁護士に相談をした方が良いでしょう。

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