後遺障害を症状固定したら治療費が支払われなくなる?

後遺障害等級認定でお悩みの方

後遺障害等級認定を受けたら治療費は支払われない? 坂出市高屋町 N様

7月5-1

【質問】
現在交通事故で負った怪我の治療のため通院していますが、治療費は加害者の保険会社が直接病院に支払っています。
示談をするために後遺障害等級の申請をしようと思うのですが、認定を受けたら治療費が支払われないというのは本当でしょうか?

N様(坂出市高屋町)


弁護士からのアドバイス

坂出市高屋町のN様、ご質問ありがとうございます。

交通事故で怪我を負って示談をする際には、いくつかの段階を経なければいけません。
まず、病院に通院・入院をしてけがの治療をします。
治療をして完治した場合には、治療費・休業補償・入通院慰謝料などを合わせて示談で請求します。
しかし、交通事故の怪我が完治せず、交通事故以前にはなかった障害が残った場合には、後遺障害に対する慰謝料と介護が必要な場合には将来的な介護料なども併せて示談で請求します。

後遺障害と認められるためには、『症状固定』が必要となってきます。
症状固定とは『治療をしても、良くも悪くもならない現状維持』の状態で、その時点で治療が終了します。
治療をすれば改善する、もしくは治療を行わなければ悪化するという状態ならば、治療が必要であるため症状固定をすることが出来ません。
症状固定の状態で残っている症状を後遺障害と言うのですが、この後遺障害の度合いで等級を決めるのが後遺障害認定です。

つまり、後遺障害認定の手続きをすると治療費の支払いがなくなるわけではなく、後遺障害を確定するためには症状固定をしなければならず、症状固定は治療をしてもしなくても現状維持の後遺障害と認定するものなので、症状固定をした時点で治療費の請求が出来なくなるということです。


7月5-2

そもそも、交通事故の示談をするためには『損害の総額が確定』することが必要不可欠になります。
示談とは法的には損害賠償にあたり、「相手が負った損害を賠償する。ただし、損害以上の賠償は義務ではない。」という考えがあるからです。
例えば「被害者の通院費を一生涯支払います。」というのは、加害者にとっては重すぎる負担となるからです。

物品の損害や治療費・休業補償など金額がはっきりとする損害以外では、交通事故で怪我を負って入通院した精神的苦痛に関しては入通院慰謝料、後遺障害が残った場合には後遺障害慰謝料で損害を償う形になります。
後遺障害になる可能性がある症状が、重くなったり軽くなったりしている状況では、後遺障害等級が確定できないため、後遺障害慰謝料が確定できずに、示談が行えないということになります。

N様の治療がどのようになっているのか、ご質問ではわかりかねますが、治療が必要な状況であるのならば医師から症状固定をすることを否定されるでしょうし、症状固定が出来ないということは示談が出来る状況では現時点ではないということになります。
反対に医師が症状固定と診断しているのならば、怪我の治療は一旦終わっているとのことですので、後遺障害認定の申請をして示談を進めていくべきだと思います。

症状固定後にも通院をしたい場合には、基本的に自費となります。
そのため、治療を継続して行いたい場合には、医師と相談の上、症状固定をせずに治療を優先すべきですし、早期の示談をしたい場合には症状固定をする方向で行くことになります。

もし、示談をしたいという理由が金銭的に困っているからという事であれば、示談前でも先に示談金の一部を受け取れる仮払い(一時金)などの制度もあるため、そちらをまず活用するという方法もあります。

急いで示談をしたいからといって、満足な治療を受けられず、正当な後遺障害等級が受けられなければ、示談でもとても不利な状況に追い込まれてしまいます。
まずは、弁護士に相談をして、適切なタイミングで症状固定をして示談を進められることをお勧めいたします。

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