後遺障害等級認定の際に気をつけるべき症状固定について

後遺障害等級認定でお悩みの方

症状固定後に後遺障害が悪化した場合には? 高松市香川町安原下 H様

7月4-1

【質問】
交通事故の示談をするために、4か月前に症状固定をして後遺障害等級の認定手続きをしました。
しかし、症状固定をしてからしばらくして後遺症状が悪化しました。
医師からも「交通事故の受傷が原因」と言われたのですが、この場合どうすればよいのでしょうか?

H様(高松市香川町安原下)


弁護士からのアドバイス

高松市香川町安原下のH様、ご質問ありがとうございます。

交通事故による症状固定とは、『治療をしてもこれ以上よくもならないし悪くもならない』状態を言い、今残っている症状を後遺障害とし、その後遺障害については慰謝料を支払うという流れになります。
つまり、後遺障害とは現状が維持される症状であるため、治療中であったり、治療をしているにもかかわらず悪化するような状態であったりするのならば、症状固定は出来ません。

しかし、まれに症状固定後に後遺症と思われる症状が悪化する時があります。
この場合、そのまま以前の症状固定の状態を基本とした示談をしてよいのかと言うと、答えはNOです。
速やかに医師に再診をしてもらい、後遺障害の悪化であるのならば、前回の症状固定の診断を取り消して、治療を再開してもらうべきです。

ここで問題となってくるのが、後遺障害の悪化・新たに症状が見つかった原因です。
交通事故から症状固定の診断が下りるまでの間は、入院・通院で定期的な医師による診断を受けていたことになります。
医師が定期的に治療をし、経過観察した上で『症状固定』との診断を下しているのですから、悪化や新たな症状が出てくるということは、『医師による見落とし・誤診』も原因のひとつではないかと考えられるからです。
医師側としては明らかな見落としや誤診の証拠がなければ、自らの過ちを認めることはありません。


7月4-2

そのため、患者が「交通事故の怪我がある程度治って、後は後遺症と言われたけれども、症状固定後から痛みが激しくなっているので、何か見落としているのでは?」と医師に聞いても、「症状固定をした段階では問題はなかった。それよりも症状固定後に転倒したり、ぶつけたりなど別の心当たりはないのか?」という返事がされると思います。
特に持病があった場合には、「膝が痛いと言っているが、以前から痛風の治療を受けていたので、持病が悪化したからではないか?」と言われてしまうケースもあります。

医師によっては、「体調の波の変動があるので、症状固定には早すぎたかもしれません。一旦症状固定を取り消して、治療を再開しましょう。」と言う場合もあります。
その場合、問題が無いわけではなく、今度は加害者側、特に保険会社からクレームが来る時があります。

保険会社は示談金を支払う立場にあり、被害者の治療費の支払いもします。
場合によっては被害者が通院をしている病院に直接治療費を支払っているケースもあります。

しかし、症状固定をしてしまうと、「これ以上治療をしても良くも悪くもならないのだから、治療費は打ち切ります。」と、その時点で保険会社からの治療費の支払いがなくなります。
症状固定後に治療を再開するにあたって、保険会社の方が「症状固定の診断は誤りで、まだ治療が必要だから、治療費の支払いの再開をします。」という対応をしてくれることは皆無です。
保険会社側も「症状固定後に後遺症状がひどくなるのはおかしい。何らかの別の原因で悪化したのならば、悪化した分に関しては治療費を支払わないし、後遺障害慰謝料を支払わない。」となるからです。

判例でも症状固定後に後遺症状が悪化した場合、被害者の言い分が100%通るとは限らず、交通事故とは別の理由で悪化したとされるものもあります。
そのため、症状固定をする際には、症状が落ち着いているかどうかの、十分な観察期間が必要となります。

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