後遺障害等級の認定はどんな機関が行うのですか?

後遺障害等級認定でお悩みの方

後遺障害の等級を決めるのは誰ですか? 坂出市築港町 A様

6月2-1

【質問】
交通事故で利き腕である右腕を骨折して、動かす時に痛みがあります。
医師からは後遺症状の認定を受けるようにと症状固定の診断書をもらいました。
後遺障害には等級があるとのことですが、誰がその等級を決めるのでしょうか?

A様(坂出市築港町)


弁護士からのアドバイス

坂出市築港町のA様、ご質問ありがとうございます。

交通事故で受傷したが完治せず、何らかの症状が残った場合には後遺症として認められます。
交通事故の後遺症の場合、加害者から被害者に対して原状回復義務があるため、後遺症状が重いほど後遺障害慰謝料を多額に支払う必要があります。

とはいえ、一定の指標がなければ加害者も被害者も「どの程度の後遺障害慰謝料を支払えばいいのか?(請求すればいいのか?)」、分からないと思います。
そのため、自動車の強制保険である自動車損害賠償責任保険では、後遺症の症状別に後遺障害等級表を作成しており、それに準じた後遺障害認定を行っています。

後遺障害等級は後遺障害認定の大きな要因であるため、民間の自動車保険会社のみならず、裁判所も基準として採用しています。

では、後遺障害等級の認定は自動車損害賠償責任保険が行っているかと言うと、少し違います。
損害保険料率算出機構という団体が認定を行っています。


6月2-2

後遺障害等級認定の流れとしては、
1.医師から症状固定の診断を受ける
2.後遺障害等級認定のための書類や診断書を揃える
3.自動車損害賠償責任保険に書類等を提出
4.損害保険料率算出機構が提出された書類を元に後遺障害等級を査定
5.損害保険料率算出機構が査定をした報告に基づき、自動車損害賠償責任保険が決定した後遺障害等級を申請者に通知
となります。

後遺障害等級の認定において、損害保険料率算出機構の査定が大きな割合を占めるのですが、そのもととなるのが申請書類や診断書になります。

2020年の人身交通事故の件数は年間30万9000件で、1日に846件起きています。
損害保険料率算出機構では、年間6000件ほどが後遺障害認定をしていると言われていますが、申請数は100万件を超えており、単純計算で1日2500件以上の申請書を処理していることになります。
(注:1件の人身事故で複数の受傷者がいるケースが多く、人身事故件数よりも申請件数の方が多くなっています)

つまり裏を返せば、損害保険料率算出機構は申請された書類のチェックだけしか、後遺障害等級を決める材料も時間もないため、書類の不備は大きなマイナスになります。
記入間違い・記入漏れ・押印漏れがマイナスになるのは言うに及ばず、医師の診断書の内容も後遺障害等級認定を左右する大きな材料となります。
医師が診断書の所見で『歩行困難で日常的に支障がある。』と書いてあるだけなのと、『右足麻痺により歩行時のバランスがとりづらく、左ひざ関節の骨折による関節変形により左足に全体重を乗せることが困難。平地を歩行時にも転倒の危険性があり、常時杖等の歩行補助器具が必要。』と、後遺症状及びそれによる障害が事細かに書かれているのとでは、どちらが後遺障害認定を受けやすいかと言うと、後者であるのは明らかであると言えます。

本来なら後遺障害等級の認定が受けられる後遺症にもかかわらず、医師の診断書に必要な事が書かれていなかったり、書き間違いがあったり、医師が自動車損害賠償責任保険に出す診断書の書き方に慣れていなかったりということなどがあると、患者の思わぬところで後遺障害等級が低いだけでは済まず、後遺障害認定自体が受けられないという可能性もあります。

まとめると、『後遺障害等級の認定は自動車損害賠償責任保険が行うが、実質は損害保険料率算出機構が後遺障害等級を査定している。その査定の元となるのが医師の診断書』ということになります。

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