あまり縁のない身内が遷延性意識障害になったら?

意識が戻らない場合

叔母が遷延性意識障害に。唯一の身内の自分は? 善通寺市下吉田町 E様

7月5-1

【質問】
母の妹である叔母が交通事故で、遷延性意識障害になりました。
叔母は独身で子がおらず、親に当たる祖父母や唯一の姉妹の母も亡くなっているため、身寄りがありません。
唯一の身内が私になるのですが、どうすればよいでしょうか?

E様(善通寺市下吉田町)


弁護士からのアドバイス

善通寺市下吉田町のE様、ご質問ありがとうございます。

離婚率の増加や晩婚化などから、交通事故で遷延性意識障害となられた方に、親兄弟・子など近しい身内が誰もいないという事があります。
そのため、E様のように「身寄りがない叔母の唯一の血縁関係者は自分のみ。」といったケースや、「離婚した両親は共に亡くなっていて、再婚した父の子が交通事故に遭い遷延性意識障害だと、一番近い身内である自分に連絡があったが、父が再婚したことも子供がいたことも知らなかった。」など、自分とは全く面識がない親類の事故の連絡が入ることがあります。

この場合、E様がどうしたいかによって変わってきます。
E様が遷延性意識障害の叔母の面倒を見たいというのであれば、病院や事故処理などの手続きをしなければならないため、家庭裁判所に成年後見人の手続きをしなければいけません。
成年後見人は叔母の代わりとなって財産を管理したり、権利を使う事が出来ます。
つまり、叔母名義の入院手続きをして、叔母名義の銀行口座から入院代を支払うといった場合、両方とも本人が行わなければいけないのですが、遷延性意識障害患者は自ら行う事が出来ないため、家庭裁判所から代理権が与えられた後見人が代わりに行います。
今回の交通事故の示談に関しても、成年後見人しか行う事が出来ないため、事故処理も行うつもりであるのならば、成年後見人の手続きを踏まなければなりません。


7月5-2

しかし、成年後見人にはいくつか問題があります。
成年後見人となった者は年1回家庭裁判所に報告書を提出しなければいけません。
被成年後見人名義の口座や使ったお金の入出金や、入院契約の内容など、揃えなければいけない書類の作成が多いため、手間だと感じる人も多いです。

また、成年後見人は必ずしも立候補した人がなれるとは限らない点です。
成年後見人の申し立て時に希望者を書くことはできますが、家庭裁判所は経済状態・健康状態・生活態度・被後見人との関連性などを鑑みて最終的な決定をするため、希望者の中にいない親族や、弁護士などの職業代理人がなるケースもあります。
以前は親族が成年後見人になりやすかったのですが、後見人による財産の使い込みなどが多発したため、現在は裁判所も弁護士を指名することが多くなっています。
単に「身内だから」という理由で成年後見人になるのは非常に厳しいと言えます。

最悪、E様は叔母の面倒を見ようと思っていたのに、成年後見人は弁護士がなってしまい、実質的な叔母の面倒はE様が見ているにもかかわらず、金銭的な事は弁護士にお伺いを立てなければならず、しかもE様はほぼ無給ということがあり得ます。

反対に、E様が「叔母とはほぼ面識がないし、身内とはいえ関わりあいたくない。」と思った場合はどうすればよいのでしょうか?
警察や病院は、唯一の身内であるE様に「事故の事情聴取に来てほしい。」・「入院の手続きをして欲しい。」など連絡をしてきますが、強制をすることはできません。

成年後見人のなり手がいない場合、所在地の市町村長などが、職務権限を持って家庭裁判所に成年後見人の手続きをします。
遷延性意識障害患者に限らず、高齢の認知症患者など、『身内が全くいないが、成年後見人が必要な状態の人』というのは少なからずいるため、このような措置がとられます。
この場合は、ほとんどのケースで弁護士が成年後見人となり、その後の非成年後見人の保護を行います。

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