遷延性意識障害患者が長期入院できない理由とは

意識が戻らない場合

遷延性意識障害で同じ病院に長期入院は出来ますか? 高松市十川東町 K様

7月1-1

【質問】
母が交通事故で遷延性意識障害になったのですが、病院から転院をいわれていて困っています。
現在入院している病院は事故で搬送された病院です。
同じ病院に入院し続けることは無理なのでしょうか?

K様(高松市十川東町)


弁護士からのアドバイス

高松市十川東町のK様、ご質問ありがとうございます。

遷延性意識障害患者が直面する一番の問題は、入院問題と言っても過言ではないです。
昔は1年・2年といった長期入院が普通にあり、病院もそれで収入を得られていた面があります。

しかし、肥大する健康保険の負担を軽減するため、医療費の削減の一環として長期入院がしづらい医療報酬に変更されました。
入院して3か月までは通常の入院報酬で計算されますが、3か月過ぎた時点で大幅に入院報酬が減らされるのです。
病院側からすると同じ内容で治療している入院患者でも、3か月を過ぎてしまうと報酬が少なくなる、つまり『儲からない患者』になってしまうのです。
そのため、3か月で退院を促されることが多く、入院3か月目でもまだ入院が必要な患者は転院が必要になってきます。

分かりやすくいえば、『3か月を超える入院は病院側の報酬が減るため、3か月を超える入院を許可する病院は少ない。』ということになります。

では、どうすればよいかと言うと、いくつかの方法があります。


7月1-2

1つめは、今入院している病院に頼んで、入院を伸ばしてもらう方法です。
しかし、今回病院側が転院を望んでいるため、難しいと言えます。

2つめは、別の病院に入院する方法です。
この方法が一般的と言えますが、遷延性意識障害患者の場合には少し変わってきます。
遷延性意識障害患者は、意識があり自分で動ける患者と比べて、かなり手厚い看護が必要となってきます。
そのため、人員や設備が不十分な病院では、遷延性意識障害患者が受け入れられません。
また、病院によっては遷延性意識障害患者の介護には費用が掛かるため、診療報酬と見合わないとして経営的な面から断るところもあります。

遷延性意識障害患者を受け入れてくれる病院は少なく、「以前は受け入れていたが、今は無理。」と言われることもあり、入院が出来そうな複数の病院を探す必要があります。

3つめは、長期療養が可能な施設に入所することです。
病院であれば3か月で転院を迫られますが、長期療養型の施設であれば1年や2年といった入所も可能です。
しかし、『病院と同じく遷延性意識障害患者を受け入れている施設が少ない』、『ベッドに空きが無く、数か月から数年待ち』、『遷延性意識障害患者の専用施設ではなく、認知症などの人も入所しているため、心理的に抵抗がある』といった問題があります。

4つめは、自宅で介護する方法です。
自宅で介護するのならば入院問題はひとまず無くなりますが、自宅介護をするまでのハードルが高いという問題があります。
『自宅が介護することが出来る住環境であるか?』、『誰が介護をするのか?』、『自宅に往診してくれる医者はいるのか?』、『万が一遷延性意識障害患者の体調に異変があった際に、すぐに入院出来る病院と提携できるのか?』、『介護をしているのが妻一人という場合に、妻が入院などとなった時にはどうするのか?』、『そもそも、遷延性意識障害患者が自宅介護をして良い症状なのか?』など、クリアしなければならないことが多くあります。

患者家族によって、家族構成も状況も違うため、どの方法が一番良いかと言いきる事が出来ませんし、状況が変わってくることも考えられます。
まずは医師や病院付の社会福祉士と相談の上で、方針を決めるとよいでしょう。
また、交通事故に精通している弁護士ならば、以前に遷延性意識障害患者の案件を多く扱っているため、『県外だけれども、長期療養が出来る施設がある』とか、『以前、遷延性意識障害患者が○○病院に転院した』といった情報を持っていることもありますので、交通事故の示談と合わせて相談してみると良いかもしれません。

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