遷延性意識障害となり、保険会社から施設を紹介されたら

意識が戻らない場合

遷延性意識障害患者を保険会社指定の施設に入れても良い? 高松市錦町 M様

7月3-1

【質問】
娘が交通事故で遷延性意識障害となり、保険会社と示談交渉中です。
娘が入院出来る病院が見つからず困っていたのですが、保険会社から長期入所可能な療養施設を紹介されました。
保険会社が紹介する施設に入所して、示談が不利になりませんか?

M様(高松市錦町)


弁護士からのアドバイス

高松市錦町のM様、ご質問ありがとうございます。

遷延性意識障害患者の家族にとって、3か月ごとの転院問題の件から入院先の確保は常について回るため、最重要課題とも言えます。

保険会社から長期療養型の施設の紹介をされて、ありがたいと思う反面で、示談が不利になるのではと思われるのは理解できます。

一旦、保険会社の立場から考えてみると、一方的に不利になる事はないと理解できると思います。
保険会社は何十年もの間、何万件もの自動車事故の示談をしています。
その中には交通事故の被害者が遷延性意識障害患者となったケースも数多くあります。
治療費や示談金を支払うのは保険会社なので、おのずと保険会社には遷延性意識障害患者を受け入れている病院や療養施設の情報が集まってきます。

保険会社としては『3か月ごとの転院で治療費の支払先の病院が変わる』のと、『ずっと同じ療養施設に支払う』のでは、後者の方が事務処理が少なくなります。
また、保険会社とその療養施設に以前から繋がりがあるのでしたら、支払いなどの事務処理も慣れているでしょうし、保険会社にも利点があります。


7月3-2

また、長期療養施設に入所することで、自宅介護の選択をしにくくさせるという利点があります。
遷延性意識障害患者家族の中には、『自宅で介護をする』という選択を取られる方もいます。
自宅介護は病院や療養施設で介護するよりも、ハードルが高いです。
自宅介護を実現させるためには、『介護人の雇用』、『自宅を介護用に改装』、『定期的な往診』、『非常時の緊急入院先との提携』など、クリアしなければいけないことが多いからです。

クリアするために、介護人の雇用費用や自宅改装費など、多額の費用が掛かってきます。
しかし、交通事故の場合、加害者側にこれらの費用を請求できます。
実際の判例では、交通事故で遷延性意識障害となった患者の介護費用に月50万円が認められ、示談総額が3億円になったものもあります。

保険会社からすると、『自宅介護をするよりも、病院や療養施設に入ってもらう方が安上がり』といった事情があるため、療養施設を紹介して入所してもらい、自宅介護を断念してもらう方がメリットがあります。

もう1つは、心理的な優位性です。
保険会社側から直接言わなくても、家族側からすれば「転院先がなくて困っていたのを助けてくれたし、保険会社には恩が出来た。」と感じる方も少なくありません。
そうなると、保険会社が患者家族にとって不利な内容の示談を提示しても、「交通事故の示談はこんなものなのかな?」と、深く考えずに示談を終えてしまう可能性が高くなってしまいます。

では、保険会社から療養施設の紹介があった場合はどうすればよいかと言うと、施設を見学して納得できれば入所してもいいと思います。
しかし、示談に関しては別と割り切って対応するとよいでしょう。

「でも、保険会社になんだか悪いし、入所した後に示談をするのが気が引ける。」と思う方もいると思います。
そのような場合には、弁護士に依頼をして示談を勧めるとよいでしょう。
弁護士であれば保険会社に対しても割り切って対応してくれますし、何よりも自分で示談交渉するよりも示談金額がアップすることが多いからです。
裁判での遷延性意識障害の示談金額は、数千万から1億円超えになる事も珍しくありません。

ですが、保険会社が提示する示談金額は、その半分以下ということも多々あります。
示談金額が少ないということは、将来的に患者の介護費用が足りなくなるということなので、患者家族は絶対に避けるべきです。

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