遷延性意識障害となった場合の成年後見人制度について

意識が戻らない場合

遷延性意識障害患者の成年後見人の手続きは必要? 高松市川部町 Y様

6月3-1

【質問】
2カ月前に夫が交通事故に遭い、意識不明の状態が続いて遷延性意識障害と言われています。
経済的な事もあり、加害者側の保険会社と話し合いたいのですが、成年後見人の手続きを先にしろと言われました。
妻なのに成年後見人の手続きは必要なのでしょうか?

Y様(高松市川部町)


弁護士からのアドバイス

高松市川部町のY様、ご質問ありがとうございます。

交通事故の示談は、交通事故の当事者か加入している保険会社、当事者から依頼された弁護士しか通常行えません。
交通事故の当事者が死亡している場合には、相続権を保有する遺族に権利があります。

では、交通事故で遷延性意識障害となった当事者の場合はどうなるのかと言うと、遷延性意識障害患者自身が権利を有します。
しかし、遷延性意識障害患者は話すことも字を書いて意思表示することも出来ないため、実際には示談を行うことが不可能です。

そのため、遷延性意識障害患者の場合には成年後見人の制定がなされます。
成年後見人とは、『認知症,知的障害,精神障害などによって、判断する能力が欠けているのが通常の状態の方について、申立てによって、家庭裁判所が「後見開始の審判」をして、本人を援助する人として成年後見人を選任する制度です。
成年後見人は、後見開始の審判を受けた本人に代わって契約を結んだり、本人の契約を取り消したりすることができます。
このように幅広い権限を持つため、後見人は、本人の財産全体をきちんと管理して,本人が日常生活に困らないように十分に配慮していかなければなりません。(引用:裁判所より)』

つまり、自分で意思表示できない遷延性意識障害患者に代わって、成年後見人が行うということになります。

「夫なら妻が、妻なら夫が代わりにすることが出来るのではないか?銀行などでも代わりにすることが出来るし。」と思われる方もいらっしゃると思います。


6月3-2

以前は、夫が妻の、妻が夫の代わりが出来る『配偶者法定後見人制度』があったのですが、法改正によりなくなり、例え配偶者であっても成年後見人制度の手続きを踏んで成年後見人となる必要があります。
高松市川部町のY様の場合でも、例え妻であっても夫の示談交渉を行うことは出来ず、成年後見人となってからでないと示談が出来ないということになります。

では、成年後見人制度の手続きを取れば、必ず成年後見人になれるかと言うとそうではありません。
遷延性意識障害患者の成年後見人の申し立てを家庭裁判所に出来るのは、『配偶者、4親等内の親族、区市町村長、検察官』です。
区市町村長や検察官は、遷延性意識障害患者に身寄りがなかったり、犯罪にかかわる場合などに職務として権限を行使する場合に限られますので、通常は配偶者か4親等内の親族になります。

成年後見人を申立てる際に、成年後見人の候補者を立てることが出来るのですが、必ず候補者がなれるとは限りません。
『候補者が被後見人に虐待をしていた事実がある』というのは論外ですが、『金銭的に困っているので使い込みが懸念される』、『健康状態に問題がある』、『高齢である』、『他の親族に適格な者がいる』などの理由から、希望通りにならないことがあります。

候補者に適格な人物がいない場合には、家庭裁判所は親族を調査し後見人就任の打診をしますが、それで適格者がいない場合には、弁護士等の職業後見人を指名することもあります。
家族でもないものが成年後見人となる事への反発が予想されますが、家庭裁判所の決定であるため従うほかありません。
しかし、「一度も会ったことが無い弁護士が後見人なんて。」、「夫のお金なのに、いちいち弁護士に相談しなければいけない」、「頼んだわけでもないのに弁護士に毎月後見人の費用を支払わなければいけない」と、家族側からすると不満が積もるかもしれません。

このような事が無いように弁護士に相談をして、「候補者が指名されやすい書類を作成する」、「万が一親族が無理であれば、既知の弁護士が後見人となるようにする」という方針で、成年後見人制度を進めるとよいでしょう。

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