遷延性意識障害における成年後見人制度について

意識が戻らない場合

遷延性意識障害の成年後見人のなり手がいない場合には? 丸亀市大手町 H様

6月4-1

【質問】
夫が交通事故に遭い、遷延性意識障害の状態です。
医師からは成年後見人の手続きをするように勧められました。
しかし、子は東京に住んでいて、私は高齢で持病もあるため、夫の成年後見人になる自信がありません。
成年後見人のなり手がいない場合はどうなりますか?

H様(丸亀市大手町)


弁護士からのアドバイス

丸亀市大手町のH様、ご質問ありがとうございます。

遷延性意識障害患者は自分の意思表示が出来ないため、財産管理や法的な決定が出来ないです。
そのため、遷延性意識障害患者の財産を守り、代わりに意思決定をする成年後見人が必要になってくるのですが、誰もがなれるわけではありません。

成年後見人の手続きの流れを説明します。
まず、被成年後見人予定である遷延性意識障害患者の配偶者もしくは4親等内の親類が、家庭裁判所に成年後見人の申し立てをします。
その際に、成年後見人の候補者を立てることもできますし、候補者をなしで申し立てすることができます。
その際、医師の遷延性意識障害患者の診断書や書類などが必要となり、裁判所への手続き費用や診断書代などで10万円以上の費用が掛かるため、注意が必要です。

申し立ての書類を受け取った家庭裁判所は、申立人との面接・候補者との面接・本人確認・親族の意向の調査を行います。
その際、『候補者や親族の中に適格者がいない』、『親族の中に適格者がいるが、本人が成年後見人となる事を拒否している』、『そもそも親族がいない』といった場合には、裁判所は第3者を成年後見人に指名することがあります。

その場合、指名される成年後見人の多くが弁護士です。
弁護士ならば成年後見人制度を熟知しており、法のエキスパートであるので、成年後見人としてはうってつけだからです。
丸亀市大手町のH様の場合、健康上の理由などから成年後見人になるのが難しく、子も望んでいない場合には、弁護士が成年後見人となる可能性が高いです。

「弁護士が成年後見人となってくれるのであれば、問題が無いのでは?」と思われるかもしれませんが、いくつかの問題があります。


6月4-2

1つ目の問題は、後見人の費用が掛かってくることです。
家庭裁判所に指名されたからと言って、弁護士も無償で成年後見人になるわけではありません。
成年後見人であり続ける以上費用が掛かってきますし、その費用は遷延性意識障害患者の財産から支払われます。
そのため、遷延性意識障害患者が長期に存命したため、弁護士に支払う費用で財産の大半がなくなるということもありえます。

2つ目の問題は、弁護士と患者家族の関係です。
家族からすると「見ず知らずの弁護士が家族の財産の管理をするなんて!」と、反発心を持つことが多々あります。
特に患者が家計の主柱であった場合には、患者の財産から家族の生活費をまかなうのですが、例え妻であっても弁護士から生活費をもらうという形になるため、不満を抱く人もいます。

弁護士と家族で介護方針が異なっていても、決定権を持っているのは成年後見人である弁護士なので、家族の意見が通らない事があります。
家族は介護がしやすい近くの病院に入院を希望しても、成年後見人である弁護士が介護内容を重視して遠方地の病院に入院を決めるといったこともあります。

3つ目は、横領の問題です。
被成年後見人の財産を自由にできる立場である成年後見人による横領事件は、かなりの件数があります。
横領事件のほとんどは親族が成年後見人であるケースなのですが、弁護士などの専門職が起こした横領事件もあります。

年に1回家庭裁判所に報告書を提出しなければいけませんし、信用問題にかかわるため、横領事件に巻き込まれることはほぼないと言えますが、他人に家族の財産を任せているので、完全には安心出来ないという方もいると思います。

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