死亡事故について
死亡事故の示談はいつまでにすればよい? 坂出市坂出町 K様
【質問】
死亡事故に遭った夫の一周忌を終えたのですが、気持ちの整理がつかずに加害者との示談をしていません。
いつまでも先延ばしには出来ないと思うのですが、いつまでに示談を終えればよいのでしょうか?
K様(坂出市坂出町)
弁護士からのアドバイス
坂出市坂出町のK様、ご質問ありがとうございます。
死亡事故の遺族からすれば、示談は家族の死亡事故と向き合わなければならないため、辛くて先延ばしにされるケースは少なくありません。
死亡事故の示談は民法上は『損害賠償請求権』にあたり、死亡事故から3年で時効だったのですが、2020年4月1日の民法改正により2020年4月1日に時効を迎えていない人身事故に関しては時効が5年に延長されました。
坂出市坂出町のK様の夫の死亡事故の発生日が民法改正前でも、時効は5年ということになります。
注意点が必要なのが、人身事故と物損事故の時効のずれです。
先ほど述べたように『人身事故の時効が5年間に延長』したのですが、『物損に関しての時効は3年のまま』ということです。
例えば、自動車同士の死亡事故から4年経った時点で示談をしたとします。
亡くなった被害者に対する損害賠償請求権の時効は5年なので時効は迎えていないため、相手方に請求ができます。
しかし、被害者が乗っていた自動車の修理費用は『物損』であるため、時効の3年を過ぎているので、請求する権利を失ってしまいます。
「それならば、結局時効は3年と変わらないのではないか?」と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、そうではありません。
1つの死亡事故から発生した人身の損害賠償と物損の損害賠償は、同時に請求しなければならないと考えがちですが、実際には別々に請求することは可能です。
実際の交通事故でも「交通事故で怪我をして通院中だけど、車が無いと不便なので先に修理を終えて欲しい。」ということはよくある事です。
自動車自体高額ではありますが、トラックに高額商品の積荷をしていて交通事故で壊れてしまったというケースでは、取引先などへの補償の問題から物損部分の示談のみを先行させるということもあります。
もう1つの注意点が、時効の考え方です。
例えば「2020年4月1日起こった死亡事故なので、2025年3月31日までに示談交渉すればいい。」というのは間違いです。
示談交渉の時効は『時効まで示談交渉を始めればよい』のではなく、『時効までに示談交渉を終えなければならない』からです。
時効直前になって相手と交渉し始めても十分な話し合いが出来ず、満足できる示談内容となる可能性は低いと言えます。
また、遺族と加害者で示談内容に関して紛糾した場合、示談がまとまらない可能性があるため、注意が必要です。
時効を延長(実際には時効を停止することにより日数のカウントを停止する)する方法としては、内容証明を送付する、裁判を起こすといった手段があるのですが、法的な手続きが関係してくるため、弁護士にアドバイスを受けて行う方が良いです。
時効の起算日ですが、正確には『死亡事故が起きた日』ではなく『加害者が判明した日の翌日』になります。
死亡事故が起きた時に加害者が現行犯逮捕されている場合には良いのですが、『ひき逃げされて1週間たってから逮捕された』、『加害者が免許などの身元の証明が出来るものを持っておらず、大怪我を負っていたため、身元が判明したのが3日後だった』という場合には、加害者が確定した日の翌日になります。
死亡事故による心の傷が癒えないというのは理解しますが、示談を先延ばしにすることは得策ではないため、なるべく早く示談交渉をはじめる方が良いでしょう。
示談交渉が重荷に感じるのであれば、弁護士に依頼をして示談交渉を任せると言った方法もあるので、検討してみるとよいでしょう。
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