死亡事故の示談の時効はいつですか?

死亡事故について

死亡事故の示談はいつ始めればよい? さぬき市小田 M様

6月5-1

【質問】
先月に交通死亡事故で母が亡くなり、四十九日の法要を終えました。
先日、加害者が加入していた自動車保険の担当が電話をしてきて、示談の申し入れがありました。
いつごろ示談を始めればよいのでしょうか?

M様(さぬき市小田)


弁護士からのアドバイス

さぬき市小田のM様、ご質問ありがとうございます。

交通事故の示談の開始には厳密な規定はなく、極端に言えば事故現場で双方の合意があればそれで成立します。

しかしながら、死亡事故の場合一方の当事者が死亡しているため、示談交渉権は法定相続人が保有しているために、すぐにとはいきません。
『故意でないにしても人を死亡させた』ということで遺族の感情を考え、通常ならば四十九日の法要を終えた後、死亡事故から二か月ほどたった頃に加害者側の保険会社から連絡があるのが通例です。

では、保険会社から示談の申し入れがあったら、すぐに受けなければいけないのかと言うと、そうではありません。
突然の死亡事故で家族を失った悲しみを二か月ほどで癒せるものではないですし、何よりまず加害者側の謝罪がなければ、示談の話をすることすら出来ないと思います。

死亡事故の場合、死亡させた側は警察に拘束されて事情聴取をされます。
怪我を負って入院をしている場合などは、退院後警察署に連行され事情聴取をされます。
死亡事故の内容が悪質でなく、逃亡の可能性が無い場合には、2・3日で釈放されて自宅待機となりますが、飲酒運転やひき逃げなど悪質な法律違反での死亡事故の場合は、最長23日拘留されます。
その間は外部との交流が一切できず、弁護士に依頼した場合のみ弁護士と話をすることができます。
そのため、遺族が「家族を死亡させたのに、加害者から一向に謝罪がない。」と憤りを覚えても、死亡事故直後は加害者本人も警察に拘束されていて謝罪するのが無理というケースもあります。


5月5-2

「加害者から一応の謝罪があったから、示談しなければいけないのか?」というと、これも少し違ってきます。
死亡事故の示談は民法の損害賠償請求権にあたるのですが、2020年4月の民法改正で時効が5年間に延長されました。
つまり、死亡事故の加害者を知った翌日から5年までの間に示談を終えればよいということになりますので、すぐにする必要はありません。

示談が終わっているかどうかは、死亡事故の刑事裁判に大きな影響を与えるため、遺族はその時期を慎重に見極める必要があります。
死亡事故が起こった場合、裁判で量刑が決まるのですが、その判断材料の一つが示談を終えているかどうかなのです。
遺族と示談が終わっている場合には、裁判所も「加害者も遺族と和解しているので、量刑を軽くしよう」という風に傾きます。
反対に言えば、加害者に対して「許せないので厳罰に処して欲しい」と希望している場合には、裁判が終わるまでは示談をしてはいけないということになります。

まれに「認知症の母が道路に飛び出したことが原因の死亡事故なので、相手の人の罪が重くなって欲しくない」といったようなケースがあります。
このようなケースでは保険会社から示談の申し入れがあった場合素直に応じた方が良いかと言うと、これもまた少し違います。

相手の量刑を軽くするには裁判前か裁判中に示談を終えておくのが良いのですが、問題は保険会社から提示される示談内容です。
保険会社は営利目的ですから、示談金の支払いを限界まで低く抑えようとします。
例えば、裁判で争えば8000万円になるような死亡事故でも、3000万円の示談金を提示してくるとこがほとんどです。

そのため、示談することに対して異議がなくとも、示談内容に関しては弁護士に相談をして、妥当な示談内容と金額であるのか精査してもらう必要があります。

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