死亡事故の示談は各自単独で行うことはできる?

死亡事故について

死亡事故の示談を一人だけ別にしたい 坂出市加茂町 S様

7月2-1

【質問】
母が死亡事故に遭い、保険会社が示談を申し入れてきました。
示談の当事者は父と兄と私なのですが、父と兄とは昔から折り合いが悪く、一緒に示談交渉をしたくありません。
保険会社からは代表者を決めてくださいと言われていますが、私だけ別に示談をすることはできますか?

S様(坂出市加茂町)


弁護士からのアドバイス

坂出市坂出町のK様、ご質問ありがとうございます。

死亡事故の示談権は相続権に準ずるため、相続権を持っている者全員に示談権があります。
仮に死亡事故の被害者が生前に『遺産は兄にすべて譲る』と遺言書を作成していたとしても、死亡事故の示談金は遺産とは別物として扱われるため、法定相続割合で分割されるか、当事者間での話し合いで分配が決められます。

死亡事故で相続人が複数いる場合には、相続人の中から代表者を決めて加害者側と話をするのが一般的です。
「夫からは示談金を5000万円と言われているが、息子からは6000万円、娘からは示談金はいらない代わりに刑務所に入れと言われているから、どうすればいいのか。」と、相続人側の意見が一致していないと、加害者もどう賠償していいのか困るからです。

とはいえ、各相続人の権利は保護されているため、各自で示談交渉を行うことは可能です。
K様の場合ですと、相続人は父・兄・K様の3人で、K様は1/4の相続権を有していることになります。
そのため、保険会社に対しては示談金総額の1/4までを請求することができます。
残った父と兄は各自で請求しても良いですし、父と兄が合同で保険会社と請求しても良いです。

この方法だと、K様単独で請求することができますし、父と兄の示談の進行具合に関係なく先に終わらすことも後に終わらすこともできます。


7月2-2

しかし、この方法に全く問題が無いかと言うと、そうではありません。
1つめは、加害者側は交渉相手が2人以上に増えるため、心情的に良い印象を持たなくなります。
2つめは、示談にかかる書類が必要となった際に、父や兄と連絡を取らなければいけない可能性がある点です。
一人だけ別に示談交渉をしているので、連絡をしづらいということもありますし、父や兄との仲がこじれている場合には協力してもらえない可能性もあります。
3つめは、示談総額の決め方です。
K様が示談した金額が低くても高くても、父や兄の示談の方に影響が出る可能性があるからです。
仮にK様と父と兄が全員示談金額が5000万円で合意していたのならば、問題はほぼありません。
しかし、K様が「4000万円の1/4の1000万円でよい。」とした場合には、父や兄から「Kが4000万円でいいと言ったから、保険会社が4000万円でしか応じないと言っている。」とクレームが来たりするかもしれません。
反対に父や兄は5000万円で示談をしたのに、後からK様が交渉して6000万円の1/4の1500万円で示談したことが父や兄に伝わったら、「Kだけ示談金が多くてずるい」と、これもまた紛争の火種となりかねません。

一番良いのは弁護士に示談を依頼して、弁護士に一任してしまう方法です。
保険会社も弁護士から示談交渉をされれば拒むことはできませんし、書類なども弁護士の職務権限で入手できるものも多く、父や兄とは弁護士を介して話をすればよいです。
示談内容に関しても弁護士には守秘義務があり、父や兄に伝わる事はありませんし、弁護士の方から保険会社に「父や兄側に示談内容を漏らした場合には、法的な措置を取ります。」と通知しておけば、保険会社も伝えることはありません。

死亡事故ですと示談だけでなく、通常の相続問題も発生しますので、単独で示談をしてしまうと相続がうまくいかない可能性も出てくるため、弁護士にまとめて相談をする方が良いでしょう。

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