死亡事故について
死亡事故の示談は保険会社に任せても良い? 高松市檀紙町 H様
【質問】
3か月前に、夫を交通死亡事故で失くしました。
加害者側の保険会社から連絡があり、示談に向けての話し合いをしています。
保険会社から提示されている示談内容で、示談をしても大丈夫でしょうか?
H様(高松市檀紙町)
弁護士からのアドバイス
高松市檀紙町のH様、ご質問ありがとうございます。
交通事故、しかも家族が亡くなる死亡事故に遭遇するのは、そうそうにある事ではありません。
それゆえに、死亡事故の示談を経験したことがある人は皆無でしょうし、周囲に死亡事故の示談をしたことがある方がいるというのもまれだと思います。
自動車保険の加入率は73%ほどですので、単純計算で10件の交通事故のうち7件は保険会社が関わってくることになります。
そのため、保険会社主導で示談が進められることが多く、交通事故の被害者や遺族も不慣れゆえに「保険会社が言うことが正しい。」と思って、示談を終えてしまうことがほとんどです。
実は交通事故の示談金額には3つの基準があり、どの基準の計算で示談をするかで金額が大きく変わってきます。
1つめは、自賠責保険の保険金を基準としたものです。
自賠責保険は、公道を走る自動車に対して加入が義務付けられている保険で、広い範囲の被害者を保障するものになります。
そのため、自賠責保険で補償される上限金額は低く、実際の損害には足りないということが多いです。
2つめは、自動車保険会社の基準です。
自動車保険は自賠責保険だけではカバーしきれない損害賠償を補償するものなのですが、計算の基準となるのは自賠責保険の単価であるため、低いと言えます。
また、保険会社は営利を求めますので、なるべく保険金を支払いたくないのが本音です。
専業主婦でも休業補償や逸失利益を請求できるにもかかわらず、「専業主婦は収入が無いので休業補償の請求はできません。」と言ったり、死亡慰謝料を低く見積もったりと交通事故の被害者に著しく不利な示談を持ちかけるのが常です。
死亡事故の場合には示談金額が数千万円になる事は珍しくないため、次に説明する弁護士基準から比べると数百万~数千万円の差が出ることも多々あります。
3つめが、弁護士基準や判例基準と呼ばれるものです。
先述したように、自賠責保険で補償される上限金額は低く、保険会社が算出する金額も自賠責を基準としているため、低い金額となります。
例えば、死亡事故の被害者が年収400万円の30歳の男性とします。
67歳まで働けたとしたら、400万円×(67-30)=1億4800万円の収入がなくなったことになります。
つまり逸失利益だけでも1億4800万円あり、生活費控除やライプニッツ係数をかけても、5320万円の補償を遺族にしなければいけません。
しかし、自賠責保険の上限は4000万円ですので、1320万円が足りないということになります。
1320万円については加害者が支払うことになるのですが、自動車保険に加入している場合には自動車保険が補てんします。
実際には、逸失利益のほかに死亡慰謝料や遺族に対する固有の慰謝料など、死亡事故で発生する賠償の範囲は多岐にわたります。
そのため、本来の損害賠償額の総額は8000万円を超えてきます。
弁護士が示談する場合には、過去の裁判所の判例に照らし合わせて計算するため、実際に生じている損害で、裁判所が認める金額を算出するので、自賠責基準や保険会社基準を大きく上回ります。
死亡事故の示談を保険会社の言われるがままにしてしまうと、低い金額での示談になってしまいます。
死亡事故の場合には、弁護士に相談する方が良いでしょう。
示談をする前ならば、保険会社が提示する示談書を持って弁護士に相談をすれば、弁護士基準の示談金額を算出してくれます。
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死亡事故の示談の時効は5年であるため、加害者側の保険会社が示談を申し入れてきてもすぐに示談をする必要はなく、場合によっては刑事裁判後にする方が良い。