死亡事故の相続人が複数いる場合に起こりやすい問題について

死亡事故について

死亡事故の示談が相続人が複数いてまとまらない 高松市紙町 E様

7月4-1

【質問】
交通事故で亡くなった父は、生前に長男の私が不動産などを多くもらう内容の遺言書を作成していました。
弟も妹もそれで納得していたのですが、死亡事故の示談金が発生してくるため、相続人の間でもめています。
この場合どうすればよいのでしょうか?

E様(高松市紙町)


弁護士からのアドバイス

高松市紙町のE様、ご質問ありがとうございます。

遺言書があってもなくても、遺産「争」続と揶揄されるくらい、遺産に関する遺族間の問題は起こり得ます。

故人の遺産は遺言書が優先され、相続人全員が納得すればその通りの相続がなされますし、相続人から異議があった場合には、相続人は自身が持つ遺留分の範囲の請求をすることができます。

では、死亡事故の示談金は故人の遺産に当たるのかと言うと、少し違います。
交通事故の場合、加害者に損害賠償請求をする権利があるのは、被害者である当事者になります。
しかし、被害者が死亡している場合には、その権利は法定相続人が有することになります。
つまり、故人の遺産と言うよりも『損害賠償権の相続』と言うのが正しいと言えます。

そのため、遺言書に「長男に全ての財産を相続させる。」と書かれていても、損害賠償請求権は死亡事故により発生した物になるので、法定相続人が法定相続割合分ずつ有することになります。
E様の場合、遺言書ではE様の相続割合が多いとのことですが、損害賠償請求権、すなわち死亡事故の示談金に関しては、法定相続割合では子が3等分することになります。


死亡事故4-2

しかし、何事にも例外があり、遺言書に「長男に全ての財産を相続させる。」とあっても、長男がそれを拒否して弟妹もそれに賛成すれば、相続割合を変える事が出来ます。
つまり、相続においては「遺言書が優先されるが、相続人全員の同意があれば自由に変更できる。同意が得られない相続人がいる場合には、法定遺留分の範囲で請求することが出来る。」ということになります。

法律だけを照らし合わせて言うと、「遺産に関しては遺言書通りの分割を行い、死亡事故の示談金に関しては3等分する」というのが、優等生の答えになると思います。
しかし、相続の状況は案件ごとに千差万別と言えますので、必ずしもこの方法がベストであるとは言えません。

「兄が先祖伝来の土地を守るというし、土地しか遺産らしいものが無いからあきらめていたけれども、示談金が入るのならば平等に分けて欲しい。」
「実家は8000万円の価値があるけど兄家族が住んでいるから、預金の1000万円を弟と半分ずつで我慢していた。でも、示談金が6000万円入るのならば、実家は兄がもらって7000万円は弟と分けたい。」
と、遺産相続でもともと配分の少ないものからすると、どれももっともな考えになります。

誰も納得できず裁判となってしまった場合、例えば、自宅が8000万円、預貯金が1000万円、示談金が6000万円で、遺言書には「自宅が長男・預貯金を妹と弟で半分ずつ」とされている場合、示談金が無い場合の相続割合は、兄8/9・弟1/18・妹1/18です。

裁判で遺留分が認められ、示談金は等分となった場合にはどうなるかと言うと、遺留分は遺産全体の1/2にあたり、残りの1/2は遺言書の割合になります。
そのため、金額的には遺産分で兄5500万円、弟1750万円、妹1750万円、示談金はそれぞれ2000万円を受け取る事になります。

ここで問題となるのが、自宅の金額は8000万円なので、兄は遺産分と示談金を足しても500万円足りないことになります。
足りない500万円を自身の預貯金などで補てんして、弟と妹に支払えればいいのですが、最悪は自宅を処分して現金化して分割ということになってしまいます。

このような分割方法だと兄弟間で大きな溝が生じてしまうため、事前に弁護士に間に入ってもらい、調整をしてもらう方が良いでしょう。

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